白く粉の吹いた昆布
白く粉の吹いた昆布は見た目が悪いということから、規格の面も消費者からの評価も低い。
毎年、昆布の製品指導会などで、白く粉の吹いた昆布について漁業者から…。
・蔵に何年も囲って白くなった方が良いダシが出ると昆布屋さんが言っている
・白く粉の吹いた昆布の方が、良いダシがとれる
・羅臼昆布は夜露に湿らせて巻いて伸して、あんなに白くしても良いのだから、利尻も白い昆布をなんとか良いことにできないものか
・漁業者は白くしたくてしてるわけじゃない、長くアンジョウしてると白くなるものだ
昨日の指導会で挙がった意見です。
次の地区へ行くため、時間切れで詳しく答えられなかったのと、そろそろ本質なことも公開した方が良い時期かなと思い、ブログに書くことにしました。
まず一つ目、何年も蔵に囲ってから使うという昆布屋さんは、とても昆布を知り尽くした昆布屋さんだと思います。そして、昆布の良さを十分に引き出してから加工したり、消費者へは魅力を伝えながら販売していることに感謝申し上げたいです。しかし、利尻昆布と名のつくものは一緒くた的な販売方法をしている昆布屋さんの方がとても多いし、店頭に売られている昆布も、昆布の魅力を推奨したり説明できる店員さんがいらっしゃらない環境であることも多いので、白く粉の吹いた昆布は売れないというわけです。
二つ目、白く粉の吹いた昆布の方が、良いダシがとれる。
先ずは、色艶の良い昆布と白く粉の吹いた昆布を、同分量の昆布と水でダシをとって味比べしてみてください。
確かに、白い粉はうま味成分なので舐めると甘いです。
だけどね、ダシをとって美味しいかどうかというと、全てがそうだとは限りません。
白く粉が吹く昆布には、それぞれ様々な乾燥過程が原因で、ダシのうま味の中に、磯臭さや生臭さなどなど、余計な雑味を感じる昆布も少なくはないのです。
説明会で見せた荒葉と白粉は、乾燥過程も規格も違うということを説明した通り、実はダシのうま味にも違いがあるのです。
三つ目、羅臼昆布のお話。
以前、羅臼へ視察に行かれたということで、未だに白い昆布のイメージが強く残っているようですけれど、確かに、一度乾燥したものを柔らかめに湿らせて巻いて伸すわけですから白くなることはある。けれど、ヒレや葉末の薄いところは利尻以上に刈り込むため、思った以上に綺麗になります。
それに、白いものは利尻と同じく別結束してるので、どれだけ白くても良いというわけではないし、そもそも、昆布の種類、仕立ても含め規格も違うし、流通も違うわけだから、それこそ一緒くたな考えはどうかなと思います。
最後の四つ目ですが、当然、白くさせたい漁業者がいるなんて、あらパパさんも思ってはいません。
だけどね、白くなる昆布をいかに少なくさせるかという努力を怠らない漁業者は大勢おります。羅臼の生産者だって同じことです。
努力を怠る方は当然そうですが、乾燥方法の技術向上が重要であることも知っていただきたい。
荒葉は別格として、湿りが入り乾燥するたびに白くなる昆布は、簡単な話、除湿が足りない状況で乾燥させた昆布であることは、大なり小なり間違いはない。
極端な話、高温多湿で乾燥させた昆布は、湿りが入り長くアンジョウしているとチョークの粉を付着させたように真っ白になります。四の五の言う前に先ずは乾燥機の使用方法を研究しましょう。
参考として、今年の羅臼昆布の生産過程を写真で紹介します。
乾燥機への昆布の入れ方や量が違うので、昆布の中の方の除湿を如何にするかを考える。風の通りとかね。
一度芯まで乾燥した昆布を、夕方から夜の湿りに当てて、昆布を柔らかにする。人工的に水をかけて湿りを入れる方法もある。
程よく柔らかに湿りの入った昆布を積み上げ、乾かないよう湿りが均一になるようアンジョウする。
アンジョウされた柔らかな昆布を一枚一枚ゲートル巻にする。手でも巻くし、機械もある。
ゲートル巻にした昆布をアンジョウしその後伸ばす。
一枚一枚積み重ね重石を乗せてさらにアンジョウ。
天気の良い日に日入れ。天候により、1枚2枚3枚と重ねて日入れしたりひっくり返したり。
生昆布の洗浄とその後の扱いとか、乾燥機での除湿や風力の状況とか、人口湿りの失敗とか、湿りアンジョウ期間の長さとか、色々と原因はあるのだけれど、何かが悪ければこの時点で様々な白粉が出てくる。
縁だけ真っ白になったり、中帯部に濃い白粉がでてきたり、何だか分かんないけど小汚い昆布とかいろいろある。
日入れし乾燥した昆布を綺麗に積み重ね重石を乗せてさらにアンジョウ。
昆布の色は選別をする頃までのアンジョウで、ジワジワと羅臼昆布特有の色に仕上がっていきます。
羅臼昆布は白いという利尻の生産者さん。この時点でどう?白いですか?
ちなみに、先月の養殖昆布の説明会で、生から乾燥機をかけたという生産者が持参された昆布のサンプルを覚えてますか。あの後、若干湿らせて1日置いただけで、真っ黒い昆布は白粉が吹いて、日入れを行なったらこの通り、真っ白になりました。
おそらく湿度の高い環境で乾燥させたのが原因だと思います。
白い昆布をどうにかするというより、白くなりにくい昆布を生産することを考えましょう。
天日でも乾燥機でも昆布の乾燥には除湿が大事です。
昆布だけじゃない、干物だって衣類の洗濯物だってそう。
それに、話は脱線するけれど、ほぼほぼ生から乾燥機を使っている羅臼昆布でもダシが濃く美味しいのは、巻いて伸すことよりも、日入れを天日乾燥で行ない、程よい乾燥状態でアンジョウすることだと、あらパパさんは思っている。
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