“UMAMI”が世界を制す!?発見 驚きのパワー その2

2013年2月28日(木)放送 クローズアップ現代より引用


●うま味の研究 開発に非常に熱心になっている

それは驚きですね。
うま味っていうのは、やっぱり日本人にしか分からないんじゃないかって、どっかに僕ら思ってましたけど、そうじゃなくて本当にグローバルな、いわば普遍的な第5の味として認知された、これはすごいことだと思いますね。
日本料理が、やっぱり世界的に認知されてきたこととやっぱり並行して、日本の味を作ってきているうま味の意味っていうのはね、分かってもらえたということですね。

●日本のうま味の特徴

これはね、日本人はもう、とにかく800年前からうま味、うま味って言ってるんですよ。
それで江戸時代のものなんかを見ますとね、うま味こそ味の基本だっていうことを書いてありますね。
そのくらいうま味っていうものにこだわってきた。
だから、1908年に、池田菊苗博士が、うま味っていうのは、どんどん昆布を煮出して、そしてグルタミン酸ソーダという結晶を見つけることができた。
こういう日本人のうま味というものに対する執着っていいますかね、それが今日、こういうものを作ってきてるわけですよね。
それが今、ようやく外国で、つまり外国では外国のブイヨンにも、あるいは中国料理の湯(タン)にもうま味、たくさん入ってるんですよ。
グルタミン酸もあれば、イノシン酸もあるし、グアニン酸もあるし、いろんなうま味が入っている。
だけどね、あちらは新鮮な肉だとか野菜をどっと持ってきて、それを何時間も煮て、そして、その中から抽出するわけでしょ。
ですからいろんな味わいがその中に入ってしまって、うま味はあるんだけども、うま味を覆ってしまうようなゼラチンだとか、脂のうま味だとか、いろんなものが入っているわけですね。
だから彼らは気が付かなかったんですね。
だから、日本人はうま味を作るための材料にものすごい時間をかける。
もうかつお節を作るっていったら何か月もかけて、昆布一つ取ってみても、1年も囲っておいて、熟成させるわけでしょ。
そういうことによって、うま味が純粋に引き出せるような工夫をしてきた、時間かけてね。
例えば、かつお節にカビ生やす、カビがかつお節に残っている脂を取っちゃうわけですよ。
そうするとね、本当にそこにはイノシン酸のうま味が純粋に抽出、それを出すときにはね、一瞬のうちにパッと出すわけですよ。
ぐつぐつ煮ないわけですね。
ですから、材料を作るのにものすごい時間かけるけど、瞬間的に出してくる味わい。
向こうのは、新鮮なものを長い時間かけて、そこから抽出してくる味わい。
ここに決定的な違いがあるんですね。
ですからうま味そのものは、スープにならないんですよ。
うま味があって、うま味を使って調理をしていく。
それから野菜なら野菜の煮物というものを、うま味を使うごとに野菜のうま味が引き立ってくると。
そういうことですよね。

●なぜ日本人はうま味の食文化にこだわってきたのか

ごはんだと思うんですよ。
ジャポニカのね、ちょっとねばっ気があると、ふっくらと炊き上がったときの、あの香り。
あれにね、ちょっと塩辛のせて。
1杯食べられるじゃないですか。
それで、そこにおいしい作りたてのみそ汁がある。
みそ汁を作るには昆布とだし。
この昆布とね、かつお節を合わせることによって、うま味が8倍にも10倍にもなるんですね。
そういうふうなおいしさっていうものが、やっぱり経験的にうま味っていうところに行ったんでしょうね。

●鹿節 トマトからのうま味の抽出

今ね、日本でもそれをやってる方います。
トマトで抽出したうま味の吸い物を作っている人がいます。
これはね、僕らやっぱり、ちょっとびっくりしました。
つまりね、うま味っていうのは風味っていうように香りとセットになってるんですよ。
ですから、かつお節のうま味っていうのは、かつお節のあの香り、昆布なら昆布の香り、それとセットになってわれわれ、おいしいと感じるんですね。
これはね、非常にローカルな好みでね、西洋の人にとっては魚臭い、海草臭い。
だからそこで彼らは、自分たちの素材でうま味を作っているでしょ。
あれはすごいですよ。
ですから、風味っていうその伝統を彼らなりにうま味という日本の技法を使いながら、日本の知恵を使いながら、自分たちの素材でうま味を料理に適用してると。
これはね、彼らすごいと思います。
 
“うま味”が開く新しい医療
仙台の大学病院ではうま味が、ある症状の改善に使われています。
「今現在、お口の痛い場所はありますか?」
「歯間ブラシすると痛みが出るんです。」
女性が訴えているのは加齢や、薬の副作用で唾液が出にくくなり口の中が乾くドライマウスです。
症状がひどくなると、激痛で会話や食事が困難になります。
そこで、唾液を出すために勧めているのがうま味が豊富な飲み物です。
「ぜひ、昆布茶を使ってみてください。」
昆布茶が、ドライマウスに働きかけるメカニズムです。
昆布茶を飲むと、口の中にあるうま味を感じる受容体が成分を感知。
すると、反射的に保湿に効果的な粘りけのある唾液が出てきます。
この唾液の分泌は、ほかの4つの味に比べてうま味の場合に最も長く続き、症状を和らげることができるのです。

東北大学大学院 教授 笹野高嗣さん
「お薬を頂いて、それで治っているのではなくて、昆布茶は単にスイッチを押しているだけで自分の体が治している。」



仙台市に住む大戸兵亮さんは、1年ほど前から昆布茶を飲み続けています。
1回の分量はスプーン3分の1ほど。
塩分を控えるために薄めに作ります。
これを1日2、3杯飲んでいます。
大戸兵亮さん
「嫌な感じが無くなって、食べ物もおいしいなぁと思って食べてます。」
うま味を感じる受容体は舌だけでなく、胃や腸などの消化管でも発見されています。
うま味を感知すると脳に信号を送り、胃液の分泌を促すなど消化機能のスイッチの役割があると考えられています。
このスイッチ機能は、認知症の患者の生活を改善する可能性があることも分かってきました。
認知症の入院食は水分を多めにしてミキサーにかけたり薄味にしたりしてうま味が少なくなる傾向があります。
そこで患者家族の同意を得て、おかゆにうま味成分を実験的に加え、食事のとり方が変化するか調査が行われました。
こちらは、80代の女性。
調査前は、ベッドにもたれたまま食事をしていました。




ところが、開始から3か月後体を起こして積極的に食べるようになりました。
調査を受けた11人のうち、全員で顔の表情に改善が見られ、7人でことばがしっかりするなどの変化が見られました。
調査を行った巴美樹さんは、うま味を感知した受容体からの信号が脳に刺激を与えたために活性化したと見ています。

九州女子大学 教授 巴美樹さん
「毎食、食べている瞬間にずっと脳に刺激を与えるわけですよね。
きちんと『食』ということを認識できるようになった。
それが改善につながったと思います。」


がん医療の現場でもうま味が活用されています。
治療の副作用で起きる味覚障害への対応です。
この病院では、患者が入院すると味覚の検査を行います。
抗がん剤や放射線などの治療を受けていると、うま味の感度が鈍くなる傾向があることが分かってきたためです。
そこで、味覚のバランスの崩れを補うためにうま味を強化した食事を開発しています。
この日は、サケの調理方法が検討されていました。
うま味成分が多いごまときなこを塗って焼き上げてあります。
「きなことごまペーストの白いの、これいけるよ、採用できる。」
少しでも食が進む料理を提供し、治療に耐える体力を維持してもらおうというねらいです。
国立がんセンター中央病院 栄養管理室長 桑原節子さん
「栄養状態が下がったり、抵抗力が下がる、免疫力が下がると、治療を続投することができなくて断念せざるを得ないケースもありますので、そういうことの率を減らすことはできると思います。」


ゲスト二ノ宮裕三さん(九州大学大学院教授)

●うま味は舌だけではなく胃や腸にもあり消化機能を高める役割

二ノ宮さん:まず口や胃の受容体が刺激されると、消化機能のスイッチが入るということなんですけれども、そのあと、食物が腸の中に来ますと、今度は消化管ホルモンを分泌します。
この消化管ホルモンは、アミノ酸やペプチドといったものを吸収するということのほかにですね、その信号が脳に伝わって、食事を十分にとったと。
そして、その満足感が伝えるシグナルだというふうにいわれています。
ですから、こういった機能を使って、うま味の受容を切り口にして、肥満予防とかそういったものにつなげるアプローチがアメリカでは今、なされているところです。

●今後どんな可能性が考えられるのか

二ノ宮さん:まずうま味の主成分であるグルタミン酸というのは、消化管のところにやって来たときに、いわゆるシグナルを伝えるだけで、それ自体は消化管のエネルギーとして使い切られてしまうということで、結局、消化管の基本的ないろんな働きに、エネルギーを与えていると。
それでそれによって、そのグルタミン酸自体は血中のほうに入っていかないと。
ですから、言ってみたら、単純なシグナルとしての役割が最も大きい役割で、その体の中に入って、何か栄養を支えるとかそういったことにはつながっていないと。
それは甘味とかとずいぶん違うんですね。
甘味はグルコースが入ってきて、血糖値を上げてということになりますけれども、このグルタミン酸に関しては、そういうことになります。
ですから、こういった働きを利用して、いわゆる薬ではない、そういった食品で、そういったグルタミン酸のシグナルを使って、いろいろなグルタミン酸が起こす機能を生かして、そういった医療が進んでいくんではないかと。
いわゆる薬を使わない、食品でもって、食品を基盤にした、そういった予防医療というものが、展開されるという可能性はあると思います。

●例えばどんな病気を考えているのか

二ノ宮さん:肥満が一番、消化管ホルモンの分泌という意味では、つながりやすいところで、あとは要するに口だけで感じるうま味の感受性というのが、実際は感受性が消化管や、さっき話はしていませんけれども、すい臓のインスリンの分泌とか、そういったものにもつながっているので、実際、感受体がリンクしていると、お互いに関係を持ちながら、働いてると。
そういうことで、いろんな消化管や臓器のそういったいろんな疾患との関連も、そういった中で見つかるんではないかということも考えられます。

●うま味でどんなことを期待されるのか

熊倉さん:これから、日本人がやっぱり日本のだしのうま味、これを若い世代にどうやって伝えていくか、そういうことで世界に冠たる日本の食文化をこれからも進めていきたいと思いますね。
 


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